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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡

第4章 バレンタインの事情♡その③








つーか、むしろ…


「……かっこわる」


オレの末期ってのは千隼の欠乏症だ…

タバコもコーヒーも不味いのは寝不足と疲れのせいじゃなくて、完璧にこいつのせいだ。


なんだそれ…って、我ながら突っ込みたくなるが、その症状の重さはつい心の声を口にしてしまったことにすら気がつかない程で…

知らぬ間にポツリと吐き捨てていた謎の呟きを彼女が耳にしたところで、オレの髪をかき混ぜていた手が頭の上で停止した。


「渚…くん!?」

「…んだよ」


ここで初めて心の声が外に漏れていたことに気がつくオレ…

…なおのことカッコ悪ぃ。


"いいからスルーしろ"

髪に絡められたこいつの手を外しながら、潤んだ瞳で下から見つめてくる千隼に対して不機嫌なオレの目が無言でそう訴える。

なのにこいつは…


「………よ」

「は!? はっきり言えよ」


残念なことに肝心な時の心の声は届かなかったらしい。

しかもよく聞こえねぇ小さな声が何かを必死に訴えるから、少し顔を離して間をとってやると指を絡めたままの千隼の顔が少し赤くなった。

そして…


「…渚くんはカッコいいよ」

「………!!」


柔らかく微笑んだ彼女の突拍子もない言葉に、盗み聞きをしていたらしい窓の外のたくさんの鳥たちが思わず固まったオレを残して冬の高い空へと羽ばたいていった。


オレを残していくな…


心のなかで思わず鳥にそう叫ぶ。





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