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琉依短編集

第4章 偶然の奇跡

「Dream Kiss」

「えぇ―っ! 注目の新人バンドだよな!」

 俺はなんとラッキーなんだろうか。一生に一度あるかないかのことだ。

「あぁ」

 女はあくまで冷静だ。

「パートは? 名前は?」

「メインギタリスト。月影琉依(ツキカゲ ルイ)あたしの代表曲は“君の刻印”」

 実はDream Kissの中では琉依が一番好きだったりする。気づけなかったのは、眠さからだった。しかし、俺の目は覚めた。

「俺、CD買ったよ」

「ありがと。お兄さん、名前は?」

 琉依は微笑む。

「片瀬祐一(カタセ ユウイチ)。会社員の三十二歳」

「へぇ―。あたしはバンド歴四年。ミュージシャンの十九歳」

「バンド楽しいか?」

 俺は素直な疑問を開く。

「楽しいよ。仲間と音楽できるし、いい仕事だ。プロなんて一握りしかなれねぇのにな」

 琉依の笑顔がキラキラと輝く。

「そりゃよかった」

「Dream Kissの皆でデビューはとが抜けて叶わなかったけど、元メン六人に新メン一人でやれてるから、あたしにとって充分だ」

「大輔と由璃は何で抜けたんだ?」

 俺が質問した瞬間、少し悲しそうに俯いた。

「二人にも叶えたい夢があった。それだけだ」

「なるほど」

 それから俺と琉依は音楽の話で盛り上がっていた。人と話して心から楽しいと思えるのは久々だ。

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