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桜 舞う

第2章 おまけ

「これは、どういう事だ?」
厳しい口調に頭を起こせば、鬼のような形相で予定表の前に立つ課長。室温が一気に下がった気がした。

あー、やっぱりなぁ……

昨日、酒々井が予定表に場所取りと書いたのを見てそんな予感はしていた。
仕事の出来る酒々井を丸一日潰させるのは勿体ないと思いつつも、忙しい年度始めに変わるとは誰も言い出さなくて。

新人が入ってこないから、とは言え三年連続、だもんな。おまけに今日すごい寒いし……

そんな事を思いつつ、少し離れた自席から様子を伺う。
課長がグルリと課内を見渡した。
「誰か代われる奴はいないのか?」
シンと鎮まった空気。恐らく全員代わりたくても代われる残務量じゃないんだろう。恐る恐る隣と顔を見合せ、互いに首を振る。
その様子に課長が小さく息を吐いた。
「今酒々井に体調崩されると困る。誰でも良い、調整出来たら俺の所に来てくれ」
そう言って自分の席へ向かう、渋い顔。

元の造りが整ってる分、課長が怒るとマジで怖い。
早々に視線を外してパソコンに向かった。

あと、この書類の校正を済ませたら手が空く。本当は、もっと早く酒々井と代わるつもりだった。
その為に昨日残業して、前もって出来る今日の業務を前倒しで片付けたっていうのに……
出ようとして先輩に捕まって、酒々井がいないせいで滞った業務を片付ける雑用を言い遣るとか、本末転倒もイイトコ……

あー早く出世してー


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