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桜 舞う

第1章 桜 舞う

会社近くの大きな公園。
いつもはまばらな人影も、この時期だけはたくさん集う。
制服女子の集団に家族連れ、色んな年齢の恋人たち。
みんな一様に桜を見上げ、カメラを構える。

淡い淡い、桜色。
日の入りを控えた空に咲き誇る。

まぁ確かにね、綺麗だけれど。

今日は上空に寒気が張り出しているとかで気温が低い。
木々の間を抜けてきた風にマフラーの中に顔を埋めた。

三年前入社した時から私は何故か場所取り係。後輩が入って来ないから仕方ないけど、この寒い中、出勤場所が朝からここってどういうことよ。

日中は天気が良かったからまだ暖かかったけど、日が傾いて一気に寒くなってきた。
分厚いタイツと腹巻にカイロ。口コミナンバーワンの発熱下着を着けたって、寒空の下ろくに動けない私には効果なし。
定期的にトイレ休憩も兼ねて、先輩が暖かい物を差し入れに来てくれるけど、それがなかったら凍えてるね。

時計は五時少し過ぎたと告げる。
定時は六時。あと一時間弱。
んー、でも最近みんな残業してるからもう少しかかるかなぁ……

…………

あ、れ?
課長と平坂さん?

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