4月は君のぬくもり
第3章 由衣の決断
「ふぅーっ、終わった」
私は額の汗をハンカチで拭った。
時計の針は午後九時を回っている。片付けを始めてから三時間がたった。
キッチンから居間、勉強部屋、お風呂にトイレ。
がんばったわ私!
完璧ではないけど、最初に比べたら雲泥の差よ。
それにこれ以上ガタガタやってたら、近所迷惑だしね。
私はきれいになった畳の上にようやく腰を下ろした。
津田君、まだ働いてるのかな。
何時に帰れるかわからないって言ってたけど、もうそろそろ戻ってくるよね?
早く顔を見て話したいのに…。
はっ!!いけない。
私はようやく母に何も言わず来てしまった事を思い出した。
携帯はマナーモードのままだった。
見ると、母からの着信やメールがいっぱい入っている。
大変…。何て返信しよう。
ーーーー
「もしもしママ?」
『由衣ちゃん!あなた今どこにいるのっ?』
「ごめんなさい、何も連絡しなくて。学校の先生方とね、飲みに来てるの。タクシーで帰るから心配しないで」
私は一生懸命、母に言いつくろっていた。
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