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果てない空の向こう側【ARS】

第8章 握る(雅紀)

結局、ご飯食べたあと実家の風呂の電球を取り替えに行った。

駄目だな、俺…。

電球を取り替えたあと台所に水を飲みに行くと、片隅に米の袋が積まれていた。

多分、翔兄か潤が買いに行ってくれてるんだ。

俺がいなくなって、俺の役目だったことも他の兄弟が代わりにやっているようで。

雅「高いところだけは無理、か…。」

和也と俺がいなくなった実家は、なんだかちょっとがらんとして見えた。

実家には実家の暮らしが、俺とミッチャンの家にはふたりの暮らしが、少しずつ進んでいく。

母「あら、雅紀来てくれてたの?」

自室から母さんが出てきた。

母「あんたの言うとおり、今日は私も智も懐中電灯持ってお風呂に入ったわよ。」

母さんが、くすくす笑いながら言った。

雅「ちょっと間に合わなかったね。しかし、懐中電灯って、間に受けて本当にやるなんて。」

母「あら、じゃあ他にどうしろって言うのよ。」

母さんと俺は、ひとしきり笑った。

母「雅紀、ついでに洗面所の換気扇フィルター取り替えて行ってよ。」

雅「俺は便利屋じゃないよ。」

俺は洗面所に行って、換気扇フィルターを取り替えた。

今度、ホームセンターで脚立を買って持って来よう。

智兄でも届く、高い脚立を。

そう決意して新居に戻った。

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