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果てない空の向こう側【ARS】

第9章 ベトナムの空の下へ(翔)

俺の鍵には、母さんからもらったソラカラちゃんと、ワインのコルクに金具を取り付けたものがぶら下がっている。

智兄に頼んで、コルクをキーホルダーにしてもらったんだ。

それを頼んだ時、智兄はしばらく不思議そうな顔をしてたけど、黙って金具を付けてくれた。

潤と二人で飲んだ日の、ワインのコルクだ。

翔「東京では、これがオシャレなんだよ。それより、お好み焼き食おうぜ。うまそー!」

村上が焼いてくれたお好み焼きは、ナンプラーを使ったオリエンタルなソースだった。

翔「超うまいじゃん。いけるよ、これ。」

村「そやろ? 取り扱う商材使って考えたんや。本社に出す報告書にレシピ付けよと思って。」

村上は、慣れないこちらの仕事をこなしながら、自分の夢であるお好み焼きの世界進出の研究を欠かさない。

バイタリティがあって、したたかだ。

村上なら、絶対やれる。

そう思った。

翔「村上、おかわり。」

村「えー、五十嵐くんはほんまによう食うなあ!」

村上は、お代わりのお好み焼きを焼きに席を立った。

俺は、ズボンのポケットに手を入れた。

そこには、ソラカラちゃんとワインのコルク。

俺も潤に失望されないように、しっかり結果出さないとな。

なんせ、『自慢の兄貴』なんだから。

翔「プレッシャー、半端ねーよ。」

村「何か言うた?」

村上が、振り向いた。

翔「いや、なんでもない。」

窓の外には、ベトナムの熱帯夜が広がっていた。

【ベトナムの空の下へ(翔)おわり】

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