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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

潤「仕事、忙しそうだね。」

ジー「まあね。来週納品のオーダー品がちょっとやっかいでね。あ、ワイン飲む?」

ジーはグラスを取り出すと、冷蔵庫から白ワインを出して注いで俺に手渡した。

潤「やっかいって、難しいデザインなの?」

ジー「こだわりのマダムでね。さすが履き倒れの街よ。」

潤「履き倒れ? 何それ。」

ジー「知らない? 京都の着倒れ、大阪の食い倒れ、神戸の履き倒れ。地域によってこだわるところが違うのよ。」

ジーはカルボナーラを豪快に頬張った。

潤「そうなんだ。確かにサロンの客も、東京よりも自分のスタイルをきちんと持っている人が多いな。」

ジー「そうでしょ? おしゃれに対してはこだわりが強いのよ。」

ジーはサラダをムシャムシャと食べた。

潤「ジー、一度俺のサロンにおいでよ。すっげー綺麗にしてあげるから。」

ジーは、いつも長い髪をひとつにひっつめているばかりで、身なりを全然かまわなかった。

ジー「何気に失礼ね。どうせ今の私は全然綺麗ではないからね。」

ジーは悪びれもせず、サラダを口にねじ込んだ。

潤「そういう意味じゃないけど、俺は美容師だからね。客の見た目を良くして喜んでもらうのが仕事だし。」

ジー「確かに潤は見た目は絶品ね。」

潤「見た目は…って、何だよ。中身がないみたいじゃん。」

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