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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

次の日の夜、サロンの閉店間際、ひとりの女性がおどおどしながら入って来た。

山口「すみません、本日の受付は終了したんです。」

黙って頭を下げて出て行くその後ろ姿を、俺は見逃さなかった。

潤「ジー! 来てくれたんだね!」

サロンをすごすごと出て行こうとしたのは、ジーだった。

山口「なんだ、潤の知り合い?」

潤「知り合いも何も、俺の好きな人。」

ジー「な、何を…!」

ジーは俺の服をぐいと引っ張った。

山口さんが、ヒュウと口笛を吹いた。

山口「そういうことなら、あとは頼んだよ。戸締りよろしく。」

そういうと、山口さんと他のスタッフはさっさと後片づけをして帰って行った。

ジー「みんなの前であんなこと言わなくっても…。」

潤「嘘は言ってないよ。シャンプーするから座って?」

俺はジーをシャンプー台の椅子に座らせた。

背もたれを倒し、ジーの顔にガーゼをかけた。

ジー「変なことしないでよね?」

潤「俺は仕事は真面目だよ。ジーだって、靴作りをふざけたりしないだろ?」

ジー「……ごめん。」

ジーは小さな声で謝った。

潤「シャンプーするよ。頭預けて。」

俺は、ジーの髪をシャワーで流した。

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