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果てない空の向こう側【ARS】

第1章 五十嵐家の朝

俺の朝は、白い割烹着に袖を通すことから始まる。


静かな朝の台所。


東の窓から朝日が射し込む。


鍋に水を張って火にかけ、頭と腹を取った煮干しを放り込む。


鍋が沸く間に、塩蔵ワカメを洗い水に浸けておく。


ふつふつと沸いてきた鍋に、木綿豆腐を手のひらで賽の目に切り投入する。


ワカメも適度な大きさに切り鍋へ。


ひと煮立ちしたらコンロの火を止め、味噌をお玉に取り鍋の中で溶かす。


味噌は米こうじ味噌だ。


多少の粒は残るが、濾すことはしない。


入れっぱなしの煮干しに木綿豆腐と米こうじ味噌。


これがわが家の味噌汁だ。


ふんわりと出汁と味噌の香りが台所に広がる頃、ガラガラと台所の引き戸が開いた。

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