
方位磁石の指す方向。
第5章 scene 5
何度交わしても
まだ照れる。
…だって、
恋人、っていう
雰囲気が甘酸っぱくて
独占欲ばっか。
今の俺には
それしかないから。
「…もしもし、」
眠そうな翔さんの声。
起こしちゃったかな。
「…和也?」
「っ…うん、」
「なんだよー」
…擽ったい。
胸がきゅってする。
「…和也?」
「あの、声が聞きたくて…
ただそれだけ…」
「……」
迷惑、だったかな。
「あの、ごめん。
迷惑、だよね…?」
「そんなことないって。
嬉しい…」
画面越しだけど
翔さんの顔が赤くなってるのがわかる。
…嬉しい
俺だって嬉しい
「…ふふ、」
「ぁ、なに笑ってんだよ」
「ふふ、嬉しい。
俺も同じ。」
「…あっそ。」
頬が緩む。
もう、これ以上の幸せって
ないってば。
どんどん愛おしさが
込み上げてきて
抑えきれなくなる。
…ほんと、
俺どうしちゃったんだろ
翔さんと付き合うようになってから
どんどん我儘になってるよ。
困っちゃうよね。
「…あ、宿題しなきゃ
じゃあね、翔さ──…」
「待って。」
「今度、どっか行こ。」
その一言だけで
心が踊る。
