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キミまでの距離

第2章 募る想い

はぁー。

「ん?どうした?」

潤くんが顔を覗き込みながら訊ねる。

「ううん。なんでもない。」

朝から腑抜けのツラで仕事にも身が入らないんだから、訊きたくもなるよね。

ごめんなさい。
ちゃんと働きます。

お店を掃除して仕込みの手伝いをして。

今日のランチはなんだろ。

〔ハンバーグ〕

わ。ハンバーグだー!

「ね!潤くん。まかないもハンバーグにしてね!」

「了解!」

潤くんは中学からの友達。

仲良しの先輩と勉強して修行して、せっせとお金貯めて洋食屋を開いた。

開店の準備でバタバタの潤くんが、店手伝ってくれない?って声をかけてきたのは1年前。

バイトの毎日で定職に就てる訳じゃないから、いいよ、と返事して今に至る。

「ねぇ。潤くん。男の人を好きになったことある?」

「はっ?」

「そんなに驚かなくても…。」

「なに?お前、男に惚れたの?」

「……」

「そっかぁ。それはため息も出るなぁ。
それで?相手はどんな人?告った?」

驚いてる割に普通にしてくれるのが有難かった。
優しいな。

「ううん。でも仲良くしてもらってる。」

「マジかぁ。うまくいくといいね。今度連れて来いよ。」

「うん。来たいって言ってた。」

「お。脈アリか?」

「どうなんだろ。」

はぁ。話してて恥ずかしくなってきた。
その時、野菜を切ったり、ソースを作ってた潤くんが手を止めて俺をまじまじと見て、

「にの…そんな好き?」

「…なんで?」

「顔、真っ赤だよ。耳まで。」



とっさに頬を擦って耳を押さえてみたところで、どうなるものでもないけど。

「どーした?顔真っ赤にして。」

遅れてやって来た この人。
潤くんと一緒に店やってる人。

大野さん。

俺たちは昔からリーダーって呼んでる。
いつからだっけ?みんなにリーダーって呼ばれてるよね。

潤くんに目くばせされて今の話をしたら、

「にのが恋ねぇ。」

ふふんと笑うと目を細めて、

「うまくいくといいね。」

潤くんと同じ言葉を言って頭をポンポンした。

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