飴と鞭と甘いワナ
第4章 scene Ⅳ
俺は何も言わず、目を閉じたまま。
雅紀が何度も"布団にいけ "と言ったけど、無視していた。
「しょうがないな…」
"怒るなよ " 雅紀の呟きが聞こえたと思った瞬間
俺の身体が宙に浮いた。
「え、ちょっと…っ」
雅紀がやたら軽々と、俺を持ち上げていた。
「何して……」
「布団、連れてくから」
有無を言わさない、ぴしゃりとした声。
…いつもの雅紀じゃない。
「下ろせよ…」
でも、まだ素直にはなれない俺。
「ダメ」
だけど。
今回ばかりは、雅紀に従うしかなかった。
寝室に入り、ベッドに寝かされる。
布団を掛けようとした雅紀の手が止まった。
「にの…着替えよ?」
まだ仕事帰りのままの、きっちりした服を見て
雅紀が微笑んだ。
ベッドの脇に投げてあるTシャツとハーフパンツを拾い上げる。
「…自分で着替える」
何とか手を伸ばして、それを受け取ろうとしたら
雅紀がひょい、とそれを遠ざけた。
「怠いんでしょ?…やってあげるよ」
にんまりとする雅紀。
背中がぞわり、と波打った。
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