飴と鞭と甘いワナ
第5章 scene Ⅴ
雅紀は確かに、慣れてるんだと思う
首筋から鎖骨、ちょうど筋張った敏感になっている場所を的確に攻めてくるから
油断したらすぐにでも、陥落してしまう気がする
「にの…」
鎖骨辺りを彷徨っていた顔を上げて、雅紀が俺の顔を間近で見つめてきた
「……っ」
何か言う暇もなく、唇を塞がれる
固く閉じた唇を抉じ開けようとする雅紀に、必死に抵抗する俺
だけどそれすらも楽しんでいるような雅紀の表情に、苛立ちを覚えた
不意に、拘束していた手を離される
チャンスかとほどかれた手を振り上げた処で、「待ってました」とばかりに再び捉えられた
今度は俺の両手首を、片手で抑えられてしまう
雅紀の大きな手のひらと長い指は
俺の手首なんて、いとも簡単に包み込んでいた
「まさ…っ」
「ふふ、いい眺め」
再び唇を塞がれる
…俺もまた、必死に唇を噛み締める
ただ、違うのは
雅紀の片手が自由だと言う事
後ろ髪をぐっと引かれ、強引に俺の首を仰け反らせ
そのせいで開いてしまった唇に雅紀はすぐに舌を滑りこませてきた