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飴と鞭と甘いワナ

第6章 HurryUp! episode 1

隣にある温もりとちょっと五月蝿いイビキがない。

いつもと違う様相にアラームより先に目が覚めた…かと云って二度寝する気にもならず。

天井を眺めながら惚けた頭で思う…何やってンだ、30過ぎの男が二人揃ってさ…って達観しちまうくらいに今は全てが何だか忘却の彼方。

もうどうでもいい感 満載。

そろそろ頭もほとぼりも冷めてきたし…さっさと退散するか。

上掛けをベッドの端に折り畳み、小っさいドアから出る。

狭い廊下を抜けて。

閑散とした店内のカウンターに鍵と走り書きのメモが一枚。

"閉めたら鉢植えの下へ"

ベタな隠し場所に思わず苦笑。

その続きに

"仲直りせぇよ!!"
"コーヒーはご自由に"

さりげない気遣い。

一宿一飯の恩返しにとかく何かをやろうにも…他人のテリトリーだ、手出しは無用がルール。

鍵を閉め、鉢植えの下に忍ばせる。

キャップを被って、ポケットを探る。

曲がったタバコを咥えながら階段を降りた…その目の前に鮮やかな山吹色。

まさか、あの車!?

辺りを見渡したその瞬間

「…見ぃつけた」

冷たいハスキーボイスが背後から聞こえた。

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