飴と鞭と甘いワナ
第7章 episode 2
乱暴に腕をひっ掴まれ、下りのエレベーターへ押し込まれた。
左右にスライドした扉がスッと閉じた途端、キツく抱き竦められ、
「…カ…ズ……カズ」
何度も切なく囁かれる。
外耳の軟骨を緩く食まれ
「…ぁぅ……んぅ」
ぬるま湯みたいな愛撫が焦れったい。
さっきまで雄の匂いをプンプンさせてたのに。
その豹変っぷりが怖い。
何を企んでる?
相変わらず食えないヤツ。
昔っからそうだ。
見えそうで見えない。
読めそうで読めない。
「…カズ?」
ほらまた声音が変わる。
闇を纏った響き。
その変幻自在さが俺を虜にして離さない。
「……出ろよ」
着いた先は地階の駐車場。
その一角に山吹色のハイブリッドカー。
問答無用に座らされた助手席。
気がつけば見慣れた天井見上げてた。
……なんだ、俺ン家じゃん。
視界を遮ったヤツに見下ろされる。
「此処で誰に可愛がって貰った?…」
"…それとも可愛がってやった?"
次から次へと出る後輩の名前は部屋に遊びにきた奴ら。
…そんなんじゃないって。
目頭がツンと痛い。
泣いてる場合じゃねぇって、俺。
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