パパ、もう一度抱きしめて
第3章 合コンと彼
その夜。
「パパ、今度の日曜日美術館へ連れていって」
夕飯を食べながら、私はいつもみたいにパパに言った。
「え、美術館?」
「うん。今ね、
“トリックアート展"やってるの。パパも前見たいって言ってたでしょ?」
私は、いいよって言ってくれると思っていた。
でも。
「なぁ梓。それ友達と行ってくれないかな?パパ、日曜はママの買い物につきあってあげたいんだ」
「えっ…」
私はパパとママの顔を交互に見た。
「ごめんね、梓。たまにはママもパパと出掛けたっていいでしょ?」
ママが優しく笑って言う。
「…どうしたの?急に」
「いいか梓、パパとばかりいたらお前はいつまでたっても恋人なんてできないぞ?」
「そんなこと!私はただ、パパと行きたいの」
「パパはもう決めたんだ。梓の言いなりにはならないって」
「わかったわよ!」
ガタッと席を立った私は、自分の部屋へかけこんだ。
「…うぅっ」
ショックだった。
悲しかった。
もうパパを独り占めできないんだ。
パパは私を突き放したのだ……。
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