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キラキラ

第5章 hungry

「………happy birthday to you…」


心をこめて、歌う。
ゆっくりと。


「happy birthday to you………」


決して伝えるつもりはない。
けど、このおさえても、おさえてもあふれでる気持ち。

どうしたらいい?


大野さん。

俺は、あなたが。



「happy birthday dear ………大野さん」



………好きみたいです。



「happy birthday to …………」



想うだけなら、自由でしょう?



「………you」




ふう、と息をつく。




俺は、にっこり笑って、大野さんを見上げた。


大野さんは、何か言いたげな顔をして、俺を見下ろしてる。


「…………」

「………………」

交差する視線。

数秒、俺たちは見つめあった。

時が止まったようだった。


………静寂。


遠くから、野球部のかけ声が小さく聞こえるだけの。


大野さんの表情がよくみえない。
………心臓が、うるさい。


大野さんの赤い綺麗な唇が、何か動きかけた。




キーンコーン カーンコーン





「………っ」

静かな空間に、思ったより大きな音で響き渡るチャイムに、びくりとする。

大野さんも、軽く目を見開いた。


どくどくなる心臓に耐えきれなくなり、俺は、沈黙を破るように、「あ………もう行かなきゃ」と
そそくさとファイルを閉じて立ち上がった。

大野さんも「あ…そっか」といい、こんな時間だもんな、と腕時計に目を走らせた。

「ありがとうな。櫻井」

「いえ。俺も大野さんをお祝いできて良かったです」

ピアノの蓋を閉じながら言うと、大野さんは、ポツリと言った。

「また、ピアノ聞かせて」

驚いて、顔をあげると、大野さんはあのふわりという笑顔で、

「俺、お前のファンになった」


………………どういう風に、消化すりゃいいんだ………?!


俺は、固まり、一瞬反応に悩んだあげく、ペコリと一礼した。

「………ありがとうございます」

ふふっと大野さんが笑う。



そばにいれるだけで、いい。

あなたの笑顔を、………これからも見ていきたい。

いいよね? 大野さん。


              to be continue

             
      


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