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キラキラ

第35章 屋烏之愛


一通り俺の説明をきいて、それぞれが理解したところで、俺は、いっそう複雑な顔になった松本に腕をとられ、裏庭のいつものベンチに連れて来られた。
その間、一言も発しない松本が怖い。


「あの……」


なんか言ってよ……


座るように促されたものの、いまだ黙ったままの松本を、俺は戸惑うような顔で見上げた。

すると、松本は無表情に言い放つ。


「組と名前」

「え」

「おまえに手を出したやつ。誰だ」

「……えっと……」


……これは……ほんとに言っても大丈夫かな?
復讐しようとしてないよね?


俺は松本の暗い瞳を、じっと見つめ返した。


大野や櫻井が言ってた。
松本は相手を殺すかもって。
冗談だろうと思ったけど、この圧は、ちょっと怖い。

ありがたいけど……ほんとにそんなことして松本が退学になったら、困る。


「まさか、かばうのか」

「っ……いいえ……でも」

「でも、なんだ」

「……殺しちゃダメですよ」


おそるおそる言うと、松本はふんと鼻で笑った。


「殺さねーわ。半殺しにはするけど」

「……半殺し」

「俺のものに手を出した時点で、アウトだ」


言って、松本は少しだけ表情を緩めた。

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