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キラキラ

第35章 屋烏之愛


「那須……去年言ったけどもう一度言う。俺は、おまえの想いにはこたえられない。ましてこんなことまでするような奴は……お断りだ」


櫻井が、凛とした顔でバッサリと那須の言葉をたちきった。

しかし、那須は、鼻をすすりながら、かぶりを振る。


「櫻井さん……!フリーだって言った!俺に好きな人はいないって…!だったら……!」


「フリー……?」


大野の眉がぴくりとあがる。


「翔くん……フリーって言ったの……?」

「うん……あ……去年の話……だけど」


なぜだか櫻井は、一転してしどろもどろになりながら、大野をチラリとみた。

大野は、ふんと鼻で笑い、那須に向き直る。


「あのなぁ、フリーなのは去年まで。今は、悪いが翔くんは俺のだから」

「さっ……智くん……!」


櫻井が咎めるように、話にわりこむ。
それは、その話は内密でありたかった、というように見えた。
だけど、大野は、何が悪いんだ、という顔で、顎で那須をさした。


「こーゆーのはな。はっきりさせた方がいいんだよ。こいつのためにも」

「でも……」


言いながら、櫻井は今度はこちらをチラリとみた。

俺らにも知られたくなかったのかな……?

俺は、松本の胸元をぎゅっと握った。
松本の腕にもちょっと力が入った。


でも……もともと、二人の間に、なんでもない雰囲気はなかったけどなぁ。


大野は、那須をジロリと睨み、


「いいか?この先、翔くんに手だしたら、俺が黙ってねーかんな?」


と、吐き捨てた。
那須は、茫然自失といった感じで、立ち尽くしてる。


「……あと、そっちの二宮は潤のだ。お前あと一歩で殺されるとこだったぞ」


二度と、手をだそうなんて思うなよ。


そう言って。

大野は、櫻井を促して校舎にもどってゆく。
櫻井は一度立ち止まりかけたが、振り返らぬまま、大野のあとを追って走っていった。


那須のすすり泣きがした。

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