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キラキラ

第6章 いっぱい  ~hungry ~

「相葉先輩は?」

質問に質問で返してみる。
つっこまれるかと、思ったら、相葉先輩は笑って、

「俺?」

って、言って、うーんとね、って考えるように下をむいた。

「高校のバスケの大会を見にいってさ。ここの学校のプレーがすごくて。仲間に入りてー!って思って。それでかな」

………動機は俺と一緒じゃん。
え、でもそれは、相葉先輩にもあこがれの人がいるってこと?

「………すげえ人がいたんですか?」 

「ん? うーん………まあね。でも、みんなすごかったよ。もう卒業しちゃったけどさ」

………気になる。

「………その人のこと好きでした?」

「え?」

相葉先輩が肩越しに振り返った。
目があった。

俺、なに聞いてんだ!!!!

思わず口をついてでた言葉に、自分でびっくりした。

ど、ど、どうしよう。

相葉先輩の澄んだ目が、俺を見据える。
ところが、内心冷や汗を書いてる俺とは対照的に、相葉先輩は、そうだな、ってあっさり頷いた。

「好きだったよ。すごい人たちで。ああなりたいって思ってた」

………あ、そういう意味ね。

俺は、深々とひそかに安堵のため息をついた。

「………相葉先輩ならきっとなれます」

「ふふっ。そう?」

なってるよ。現に。


少なくとも、俺にとってはスーパーヒーローだよ。


サラサラの髪の毛が、目の前でゆれる。

広い背中。

力強い腕。

背中越しに聞こえる甘い声。

肩越しに見える相葉先輩の顔。


相葉先輩の匂いと温もりに、包まれながら、俺は
この瞬間を忘れたくなくて、思わず相葉先輩の肩に、自分の頬をくっつけた。

「………二宮?寝んなよ?」

「………寝てません」



俺はさ、相葉先輩。

あなたにあこがれて、入学しました。

話をしたくて、一緒にプレーしたくて、追いかけてきました。


今、願いがかなって、幸せだよ。



「さ、ついた」

相葉先輩が、白い扉の前で立ち止まった。



でもさ。ちょっと欲が出てきたよ。

俺だけを、見てほしいって。
俺だけに、笑ってほしいって。


なにかな。

………なんでかな。





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