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キラキラ

第37章 寵愛一身


「あの風貌だろ……女も男も際限なく寄ってくる」

「…………」


松本は苦々しげに呟いた……けど。


……オンナも。


「……オトコも?」



恐る恐るたずねると、

「あいつは、来るもの拒まずだからな」

と、松本は肩をすくめた。

俺は思わず、家を振り返った。
従兄弟さんは、既に家のなかに入ったみたいで、お屋敷はしんと静まりかえってる。


松本は困ったように笑った。


「お前を、あいつに見せたくなかった。多分ストライクだからな」

「……やめてくださいよ」

「いや、ほんとだ。だから、もう帰れ」


松本は、まわれ右をさせるように、俺の背中をポンポンと叩いた。
その手が、ぽかぽかどころか熱く感じて、俺は、急に不安になって、慌てて松本を振り仰いだ。


「あのっ……明日は来ますか?」

「……たぶん」

「……やっぱり熱あるんじゃないですか?」

「ねぇよ」


松本は笑って、俺の背中を押した。


「ほら、あいつが戻ってくる前に帰れ」


やたらと帰れと言われる。

だが、不本意だったが、しんどそうにも見える松本を早く休ませてあげたくて、俺は、はい、とぺこりと礼をした。

明日は会えますように、と
祈りながら。

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