
キラキラ
第39章 バースト12
「あの。図々しいこと言ってもいいですか?」
「?……はい」
「今度、翔くんのパスタをいただいてみたいです!」
「………………」
絶句した。
…………いやいやいや。
これは、もう、まずいと思う。
無邪気にもほどがある。
適当にあしらうには限界なくらい、踏み込まれてる気がする。
天然の雰囲気にのまれちゃいけない。
俺は咳払いをひとつして、静かに諭した。
「…………それはできないです。ごめんなさい」
「えー。わたし、パスタ大好きなんです。是非」
「そういうことじゃなくて」
俺は、言葉を遮った。
「……俺、実は付き合ってる人がいるんです」
「……え?」
今度はカホが絶句する番だった。
「だって……いい人はいないって、おっしゃいませんでしたか」
「ごめんなさい。嘘ついてました。実はいるんです」
俺は正直に詫びた。
カホは、大きな目をもっと見開いて固まってる。
俺は黙ってステアリングを切る。
重苦しい沈黙が、車内を覆うが、どうしようもないから黙っていたら、
「その方にあわせてください」
カホがとんでもないことを言い出して、俺は急ブレーキを踏むとこだった。
