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キラキラ

第15章 1000回言って


N



毎週木曜日は、たいがいうちにくる相葉さん。


二人で酒を飲みながら、翔ちゃんの番組をみるのが、ここ最近の恒例行事だ。

ただ、それは約束したことというわけでもないから、仕事がたて込んでたら、当然行われない事で。
たいてい前夜に、お互いの予定をすりあわせるための連絡をとりあってる。
手段はLINEであったり、電話であったり、いろいろ。

だけど、レギュラーをたくさん持っている相葉さんは、ちょうど忙しい時期なのか全然連絡がこなくって……………。


くるの?こねえの?


とだけ、打って、俺は、不貞腐れたように一人の部屋でゲームを立ち上げた。


半分拗ねモードで、買い物はしてない。

ビールとチーズくらいは、冷蔵庫に常備してあるから、胃にいれるものはある。

もし、腹へったと騒いだら出前でもとったらいいよな。

そんな感じだから、自分一人で食べる夕飯のことは、何も考えてなかった。



……………また怒られちまうな。



ゲームに夢中になるあまり、食べる、寝る、などの人間としての生活を、ないがしろにする俺を、あいつはよく怒ってくれる。

ある時、夕飯を作りながら、何気なく言われたんだ。


『にのには俺がいなくちゃね』


満面の笑みで、そんなことをいうから、嬉しいのを隠すように鼻で笑ってやった。


『逆でしょ。相葉さんには、俺がいなくちゃでしょ』


『ええっ?やっぱそーかな?』


と、天然な笑顔になるあいつに、ドキドキした。


思い出して、急に恥ずかしくなり、俺は、コントローラーを握りしめる手に力をこめた。


つきあいが長いあいつと、そういう関係になって数年たつ。


でも、もはや、空気のように常にそばにいるあいつに、いまだに胸を苦しくさせてる俺は、相当なあいばかだと思う。


……………相葉さん。知ってる?

本当はさ。

相葉さんばかなやつのことを指すんだよ。あいばかって。


ふんと笑って、うりゃ、と必殺技を繰り出していたら、スマホが、ピンポンと鳴った。


画面に目を向けると、ぽっと明るくなり、メッセージがついたことを知らせてる。


「……………遅いよ」


呟いて、コントローラーを傍らにおき、画面をタップすると、目に飛び込んでくるゴメンねのスタンプ。










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