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キラキラ

第18章 アッチノキミ

柔らかく濡れた唇をゆっくり離すと、潤は物欲しげな目をしてもう一度口をあけねだってきた。
俺は、その唇にちゅっと軽くキスをし、そのままコツンと額をくっつけて、低く問いただす。

なぜ潤から病院の匂いがするんだ?


「……どこか悪いのか」


「あ………え?」


はあ……っと息を弾ませ、潤んだ瞳で俺を見上げる潤は、食べてくださいと言わんばかりの色気を纏い始めてて、一瞬理性が飛びかける。
でも、事は重大だ。

病院なんて無縁のはずなのに。

俺は、腰にまわしてた手で、背中をゆっくりさすってやりながら、答えを待った。

唾液に濡れた真っ赤な唇で、潤は、息を整えながら、ああ……やっぱ分かっちゃったか、と笑った。


「あの…歯が痛くて」


「………は?」


歯?


予想もしてなかった答えに、思考が一時停止した。

え。どういうことだ?


「えっとね……」


きけば、昨日の晩から痛みだしたとかで、我慢できず、今日は、ずっと痛み止めを飲んでごまかしていたらしい。
仕事が終わって、即、事務所の息がかかる歯医者に予約をねじこみ、治療を終えて帰ってきたところ、ということだ。


「翔くん、俺が体のどこかが痛いって言ったら、すっごく心配するでしょう?」


「……」


否定はしない。

事実、潤の体調が悪くなるたびに、俺がすごく心配する様をみて、にのが一言、

「……そこまでおろおろしなくたって、死にゃしないよ?」

と皮肉ったことがあるくらいだ。

俺は、どうやら、こと潤のこととなると、過保護になるらしい。


……でもさあ……。

だからって避ける?


「……歯が痛いくらいなら、避けたりしないで正直に言ってくれてもいいんじゃねえの?」

ため息混じりに不満をもらしたら、潤は恥ずかしそうに笑んだ。

「うん……でも。翔くんに心配かけたくなかったんだ。なるべく普通にしてたんだけど……分かっちゃった?」

「分かるわ!」

全っ然普通じゃなかったっつの!

俺が、冗談ぽく怒鳴ると、潤はくすくす笑って俺にしがみついてきた。

「ごめんね。……でも。それにさ」


はにかんで、俺を見上げる。


「翔くんをみたら、歯が痛かろーが、キスしたくなっちゃうもん」


「……」


可愛らしい笑顔。
ぷっつんと、理性が弾けとんだ音がした。

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