
キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
必死な顔。
違うって訴える顔は、泣きそうに歪んでて、こっちが悪いことを言ってるみたいに胸が苦しくなる。
……でもさ、どう考えても嫌がられてるとしか思えないこの仕打ちは、なんなんだよ?
俺だって、相当傷ついてる。
振り払われた手が痛い。
それと同じくらい心も痛いんだ。
たとえ大野が恋人であっても。
そりゃないんじゃねぇの……?って思ってしまうのは許してほしい。
「あの…ごめん…」
絞り出すような声音に、頷く。
「うん」
「……違うんだ。今、誰に触れられても、ダメで…」
「なんで?」
「…………思い出すから」
「何を?」
翔が、ぐっと唇をかんだ。
おそらく無意識に触れているであろう、その手首に視線がゆく。
言いたくないならそっとしておこうと思っていたそこにあったアザは、そんなにも翔の心にダメージをあたえるほどのものだったのか、と、逆にショックをうけてしまう。
ならば、もっと初期の段階で、詰め寄っとくべきだったんだろうか。
「……大野になにかされたのか」
「違う」
「じゃあ……」
いいかけて、いつかのトイレでの会話を思い出した。
大野が自分の恋人にチョッカイだされたから、逆上した、と。
チョッカイ……
「……誰かに襲われたのか」
「……」
翔の肩がぴくりと揺れた。
うつむいてしまってるから表情は分からない。
だけど、それが答えだ、と思った。
「……最後まで?」、
「最後……って」
「その……挿れられたのか」
「何を……?」
言わせんのかよ!?
俺は、はあ……とため息をついた。
「セックス……したのかって、聞いてんだ」
「……えっ!?」
翔が、目を丸くして絶句して。
それから猛烈にふるふる首をふった。
「しっ……してない!」
「でも……」
「キスされただけだよっ」
叫ぶように怒鳴られた。
