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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


Kazu



ぼんやりと座席に座り、うつりかわる車窓のむこうを眺めていた。

夕方と呼ぶには、まだ少しだけ早いこの時刻。

春の光が、ポカポカとさしこむ電車内には、俺と同じ制服をきた学生が何組かいるだけで、とてもすいていた。

座席のはしっこに座ってる俺は、手すりに行儀悪くもたれ、小さく欠伸をした。


(眠た……)


翔さんに借りたおすすめの本が面白くて、昨日は遅くまで読み耽っていたから、今日は一日中眠くてたまらなかった。

今夜は絶対に早く寝よう。

心に決めて、再び窓の外に目を向けた。



俺は、この春、進級して三年生になった。

三年ということは。
いよいよ受験という名の波がじわじわと自分に迫ってきたということになる。

考えたくないけれど……それは、このまま大野家の居候で居続けることが難しくなってきたことを指す。

進学するにしても、就職するにしても、大野の家の人々に、頼ることはできない。

結局……嫌でも一度は自分の家に帰らねばならないのだろう。
俺は、まだ一人じゃ何もできない未成年だ、ということを思い知る。


「……はあ」


このことを考えるとため息しかでなくて……。

智さんと翔さんには、すごく迷惑をかけているのだろうけれど。
今の生活が心地よすぎて、手離したくないんだよなぁ。


ガタンガタンという電車の揺れに体を預けながら、手元にあるリュックを引き寄せた。

窓のむこうは、古い、昔からの家が立ち並ぶ住宅街から、灰色にそびえるビルが増える風景にかわってきている。


……そろそろ、あの人たちが通う学校がある駅だ。



やがて、俺の帰り道の途中にあるその駅に到着する。
プシュッという、扉が開く音とともに、あらたな高校生が、ドヤドヤ入ってきて、静かな車内が、賑やかになった。

ふと入り口に目を向けたら、その人の群れのなかに、ひときわ目立つ男を発見する。

濃い眉に、キラキラした大きな瞳。
白い肌。艶やかな癖っ毛。



あ……


と、思ったと同時に、むこうもこちらに気がついて、大きな目を細めて笑った。


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