
キラキラ
第27章 かげろう ~バースト6~
知らなかった。
かずが持ってる傷。
智さんたちとかずの、運命の出会い。
穏やかに笑ってる大野家の過去にそんなことが、あっただなんて。
俺は、息をするのも忘れたように、かずの話に聞き入っていた。
そして、今日はかずが二年ぶりに母との再会を果たしたという。
かずは、淡々と語る。
母親に泣かれた、と。
お帰りなさいって。
ごめんね、と言ってもらった、と。
……でも。
ここまでの話を聞く限りでは、かずの浮かない顔に結びつく要素が見当たらない。
再会したのが、間違いだった…?
俺の顔にその疑問が書いてあったのだろう。
かずが、小さな声でポツポツ続けた。
「……母さんも万能じゃないんだな。一人の人間なんだな、と思えることができた。そもそもが、母さんの本音なんて、俺にチカラがなければ知りえることもなかったことだから」
「うん…」
「誰でも闇くらいあるもんね。…口に出さないだけで」
「そうかもね…」
「だからね、自分のなかでその決着はついたんだ。しょうがなかったって。母さんも追い詰められてたからって。……だけど、今度はすごく怖くなって」
かずの声がぐらりと揺れた。
俺は、思わずかずの顔をみた。
茶色い瞳が潤んで、目尻から今にも涙がおちそうで。
「もう母さんの心は読むまい、と思えば思うほど、コントロールがきかなくて…母さんと、普通に喋ろうとしても…途中でチカラが邪魔するんだ」
続いて、しゃくりあげるように揺れだしたかずの小さな肩を、思わず引き寄せた。
「…これからの進路についてはちゃんと話したんだ。でも…母さんと話をするのがとにかく苦しくて……最終、帰ってきてって言われたけど…俺、うんって言えなかった…」
「かず…」
ぐすっと、かずが鼻をすする。
たまらなくなって、肩をぎゅうっと抱いた。
ポタポタおちる涙。
「相葉くん……俺…」
「かず」
「俺…自分がどうしたいのか分かんない…」
