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影に抱かれて

第2章 月と太陽

暖かな春の午後―

フランクール家自慢の薔薇園に囲まれたあの厳めしい塔も、今日はどこか柔らかく見える。二千株はあろうかというその薔薇の真ん中で、リュヌは今日も汗を流し働いていた。

ここの薔薇の世話が、二年ほど前から与えられているリュヌの仕事だった。

あの、塔にこっそり忍び込んだ夜から四年が経ち……十歳となったリュヌの面影からは幼さも僅かに影を潜め、その姿を少しだけ少年らしく、逞しく変えていた。

しかし、陽の光に溶けそうな金色の髪、そして透き通るような白さを持つ華奢な身体は、そのあまりにも美しい顔立ちのせいもあって、子供のうちから庭仕事をしなければいけない様な身分にはとても見えない。

リュヌにはどこか品の良さのようなものがあった。

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