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影に抱かれて

第11章 回りだす歯車

暗い部屋の中で大きく、影のように見えるジュールの身体は、素早く部屋の中を横切って、あっという間に近付いてくる。そしてベッドに腰掛け、横たわるリュヌの頬にジュールは手をあてた。

まるでそこにいることを確かめるかのように、優しく動く……ジュールの手。

「生きていた……本当に生きていたなんて」

そしてリュヌの腕を掴み強引に上体を起こすと、両手で頭を包み、リュヌの唇に口付の雨を降らせていた。

懐かしいジュールの感触、そして匂いを感じ……リュヌはもう、今までにあったことや、夫人の命令、そして昨夜見たブロンドの女のことさえももう、どうでもいいと思うようになっていた。

「ジュール……愛してる……」

リュヌがその言葉を口にしたのは、初めてだった。

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