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影に抱かれて

第15章 その、白い手

「突然だが、お前に話しておきたいことがある……お前の出生のことで」

リュヌは知らぬ間に……胸のロザリオをギュッと握りしめていた。

「お前は孤児などではない。フランクール家の血を……貴族の血を引いた人間なのじゃ」

それは半ば予想していたことだったが、衝撃的なことには変わりない。
リュヌは深くため息をついた。

「ああ……本当に……」

「なんじゃ、もっと驚くものかと思ったが……」

「驚き……ました。でも、さっき気付いたんです。このロザリオの裏にある紋章……磨かれていたから分かりました。これは奥様のご実家のものですよね?」

「そうか、お前は学園で紋章学まで……」

しかしリュヌは、ジャンのある言葉に引っかかりを覚えた。確かにこの紋章は夫人の家のものなのに……

「でも今……フランクール家の血、って……?」

「お前は……旦那様が奥様に仕えるメイドに産ませた子供なんじゃ……」

旦那様がメイドに……そこまで考えたとき、リュヌはある事実に気付き、目の前がすっと暗くなるのを感じた。

自分が一生の愛をささげた……そして愛し、愛されているジュールは……

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