テキストサイズ

sugar-holic2

第5章 行方の知れない想い

だけど…

「…両方」

小さな声で答えると、倉田くんが短く息を吐き出し

「本当に…ズルい女だな」

そして、頭の後ろに手を回されて…

「んっ…」

柔らかく、唇を塞がれた。

「こういう時なら、嘘でも、恋人だからとか言わない?」

至近距離で見つめあって、囁くように小さな声で言われて…

嘘なんて言えない。

「部下だったら…」

「ん?」

聞き返す倉田くんの視線から逃げるように目を伏せると

「ただの部下だったら、こんな風にキスなんかしない」

ボソボソと答える自分が嫌になる。

素直に言いたいのに…素直になれない。

正直に自分の気持ちを晒したら…?

不意に、おでこに倉田くんの唇が触れた。

思わず倉田くんを見れば…

「そんなの…させねぇっての」

その顔、ズルい。

そんな優しい目で見ないでよ。

自分でも分かるくらい、頬が熱くて…顔、赤くなってる筈だ。

倉田くんの顔が近付いてきて…

ゆっくり目を閉じるのと同時に、唇が触れた。

甘い。

こんな甘さ、他に知らない。

その甘さに溺れそうで、倉田くんの背中に手を伸ばした…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ