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sugar-holic2

第9章 時間を忘れて…

「着いた~」

駐車場に車を停めて、一息ついた。

ここは今晩泊まる旅館の専用駐車場だ。

良かった。無事着けた。

笑顔で倉田くんを見れば…ん?

倉田くんはくたびれた顔で生あくびを噛み殺していた。

「疲れた?」

「主に『気』が」

…気疲れしたって言いたいのね。

「それはどうも。お疲れ様でした」

作り笑顔を浮かべて車から降りた。

…旅の目的を忘れないように。

怒らない、怒鳴らない、喧嘩しない。

頭の中で反芻して言い聞かせる。

荷物を後部座席から取り出して…と

「貸して」

倉田くんがボストンバッグを持ってくれた。

「え?いいよ。私、持てるから」

「いいから。運転して疲れてるだろ?」

ポンと頭を軽く叩くように撫でられると、

「で?まずフロント行くのか?」

「う…うん…」

二人分の荷物を持って先を歩く倉田くんを見ながら思う。

こういうのが嫌味なく普通に出来るから…。

すごい。

けど…。

考えに陥っていると

「行かないのか?」

足を止めた倉田くんが怪訝な顔つきで見ていて。

「あ、行く!」

慌てて倉田くんの元に走り寄った。

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