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Best name

第32章 最高の名前

『アイル…!?
これは、あなたのためなの!!

何も間違ってない!
何も悪いことはないわ!

広い家に住んで
好きな服着て、裕福に~…』












『私は・・・・・・いらない』








『!?』


アイルの声に
一方的にまくし立ててた母親が


ピタッ……っと
一瞬だけ止まった







『大きいおうち…?

別荘?・・・キレイなお洋服…?』









アイルがなんとか体を起こして
ゆっくり顔をあげる




『そんなモノ・・・どれも…』




『アイル…!お母さんの言うこと…っ』










『私は・・・そんなモノ

ひとつも欲しくないっっ・・・』







アイルが涙を浮かべて強く言った




『そんなもの、いらない
私は・・・みつけたんだもん

そんなものより…ほしいもの
〃私でも〃・・・みつけたの

私にも…〃大切なもの〃……あるんだもん
それだけは……なくせない』













『…何を馬鹿なことを
そう・・・やっぱりアンタは
ただの出来損ないね…』



『っっ……』


アイルがギュッと目を閉じた




『とんだ出来損ないだわ……っ!!!』






『アヤメさん…っ!…もういい加減に…っ』



『っごめんなさい…

役に立たない娘で…ごめんなさい…っ』




ソウタさんの言葉に被さるように
アイルは何度も呟く


お母さんに向けて『ごめんなさい』と

そして
さらに悲しい事を言う








『ごめんなさい…

生まれてきて…ごめんなさい…お母さん』








なんと言おう…

アイルの姿は

アイルは…まるで虐待された子どものよう


いや・・・十分に


立派な虐待だ



きっと…幼いころからずっと





アイルは…一体何度
この人からこんな仕打ちを受けたのだろう

一体どれ程…こんな風に
その心に傷を負ってきたのだろう



それでも子どもというのは…アイルは

こんな母親であってもアイルは

お母さんに必要とされたくて
振り向いてほしくて
愛してほしくて・・・



…。


オレは…アイルを哀れんだ事は一度もない


だけど今…初めてアイルに
心の底から同情した


こんな人を…母親に持つアイルに



どうして…この人が
アイルの母親なのだろう……。

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