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第8章 迫る悪夢

店も病院も既に閉まっている

オレは裏手のソウタさん宅側から入る


『アイル?』

『リョウキ…ごめんね
なんか、こんな大ごとに…』



少しだけホッとする

元気…と言うのも変だが
泣いてたり怯えてたりしないかと
心配だったから
ひとまずは胸を撫で下ろす

アイルは特に変わらずだった


『わるいなリョウキ。それじゃ あと頼んだぞ』

『はい。ソウタさんも お気をつけて』

ソウタさんは仕事へ
オレとアイルは帰り道へと進んだ

『リョウキ…ごめんなさい
仕事で疲れた帰りに…』

『気にするなって…それより大丈夫か?
ケガは?』

『大丈夫。チョットすりむいただけ。平気だよ』

腕の絆創膏を見せながら
〃元気だよ〃とアピールするように
少し笑うアイル



『こわかったろ…。無事で良かった』

アイルの手を少し強く握って歩く

『ん、ぅん…なんか一瞬でよくわかんなくて…
…え?…ねぇリョウキ…こっちは…』

『ん…。オレん家行くの。今日うちに泊まれ』
『ぇっ?…なんで…そんな』

『念のため。先に言っとくけど
しばらく、うちから仕事も行けよ?』

ソウタさんとの話で
しばらくオレの家に

オレが遅くなる日はソウタさんの家に帰らせて
アイルを自宅に一人にさせるのを
避けることにしたのだ

『そんなぁ…。わるいよ。第一…
チョット大げさじゃない?…ソウタさんも…』

『念のためだって言ってるだろ?
何もなきゃそれが一番なんだから』

『う…ん…』

そう…何かあってからでは遅い
オレはソウタさんの判断は懸命だと改めて思った

すまなそうに…納得いかなそうにしてるアイルを
コンビニに入れて
夕飯や必要な物を選んでくるように言う

オレは外で、ザワついた気持ちを落ち着けるようにタバコをふかした

オレの家に帰り
夕飯は出来合いで済ませる

『明日…休みだよな確か?昼のうちに
着替えとか持ってこいよ?』

『…ねぇ。やっぱちょっとオーバーだよ…こんな』

『…』

『リョウキもソウタさんも忙しいのに…
なんでもないことで迷惑かけたくないよ…
私だって大人だよ?…二人してそんな…』

不満げに、すまなそうに、アイルが言う

『~…そう思うんなら…言うこと聞いてくれ
何度も言うけど、念のためだ
何事もなきゃそれでいいから。な?』

『~~…』


『返事は?』
『……はい』

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