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じぶん克服日誌

第21章 雨


数ある天気の中で
一番好きなのは雨。


小さいころは雪だった。

あの白い世界が
キラキラして楽しかったから。


自分で自分を傷付けることが
日常だったころは、

曇りが好きだった。

晴れは眩しすぎて雪はめったになくて、
雨は傘のせいで動きにくいから。

それと、
当時の私の心境に近かったから。



いま。

雨が好きになったきっかけは、
たぶんいつかの散歩。


傘も差さずに携帯も持たずに
カッパさえ身に着けずに

台風接近中の防雨風のなか外に出た。


歩く人はほとんどいない。

車だってめったに通らない。

そんな、人の目から逃れたような錯覚。


夏場の温かい雨粒に
不思議と不快感はなくて、

けど濡れて重くなった服が
自分のやっている悪いことを責めているようで

気持ちは暗くなる。

その矛盾する感情さえも
雨の下ならやり過ごせていた。


雨水が溢れて川のようになってる道を、
つっかけたサンダルで歩く。

くるぶしあたりまで浸かる。

その感覚が、
「良識のある子」という架空の私を
一緒に流してくれたみたいで

はしゃぎたくなった。



そんな、

雪よりも曇りよりも晴れよりも
わくわくしてしまうことを見つけたから。


だからたぶん、
私は雨が一番好きなんだ。


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