ある晴れた冬の日に
第3章 約束
「なぜ…ここにいるんだ?」
先生の目はこわいほど真剣だった。
きっと例の彼女の夢を見ていたに違いない。
「あの、本を返しに来たんです」
「ああ、蓮池だったか…」
先生の手が腕から離れた。
私はゆっくり立ち上がる。
指で髪を耳にかけて、心よ静まれと念じ…。
「そんなに私、その人に似てますか…?」
「…」
先生はふっと笑みを零し黙ってしまった。
いけない私ったら。つい余計な言葉を口にして。
先生には辛い思い出なのに…。
「す、すみません!私もう帰ります」
「待って」
「え、」
「せっかくだからもう少し話そうよ」
「でも」
ほんとは私も先生と、もっと話していたいと思った。
だから嬉しくて。
「はい…っ」
先生の隣に座ったんだ。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える