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密猟界

第3章 嵐吹く刻も─.

 「僕とユノは…」白いレリーフは、ブライダル・ローズの花びらに似たくちびるを、小さく開いた。「違う世界の人間なんだ─な…って、あのときに…はっきりと思い知らされた」「チャンミン…」「ユノと…誰もが─、家族みたいに話してて、楽しそうにユノの肩をたたいたり、手を握ったり、…ユノもずっと笑ってて、嬉しそうな顔─」 サラサラと小雨まじりな風が、教会の外の壁や窓硝子を、撫でてゆく。 「僕近寄れなかった。いけないって思った」「…チャンミン。もうお前に教会の誘いはしないから」「礼拝はユノの大切な個人生活。─今のは僕の信仰告白」外は鈍色に、しだいに変わってゆく……チャンミンの真紅の衿もとが、銀のいろに輝き出した。
 「誘わない……? そう。─僕を、また…ユノが置いて行く…ひとりきりの日曜日」立ち上がり、ユノを見下ろして、チャンミンはそのガッチリとした固い肩に、掌をおいた。
 「…僕も云えば良かったんだ─行かないで、教会に。僕と日曜日は一緒にいてって……ね?」まるで赤ん坊でも寝かしつける静けさで、ユノの背を礼拝席の長テーブルの上に、凭れ掛けさせた。

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