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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

私は、海の近くの小さな町に生まれ育った。


両親と私…三人家族。
すぐ近所に父方の祖父が住んでいた。


父も母も
各々、会社経営をしていて
特に母は
高学歴…文字通りのキャリアウーマンだった。

頭脳明晰、仕事が出来て自立した女性……
そんな母は特に私の躾は厳しかったように思う。

幼い私の記憶に残る母は

中々お箸を持てなかった私の手を叩いては
怒る姿……
理由は一々覚えていないけど
よく玄関の外に一人、放り出されたこと……
『表に出ていなさいっ!!!』
って、怒鳴る声。


母にとって、マイペースでドンクサイ私は
きっと、さぞかし出来の悪い子だったであろう。

そして私が物心ついてある程度大きくなった頃には家族三人
ほとんど家で顔を合わせることもなくなっていた


やれと言われた訳ではないけれど
家の掃除や選択、夕飯の仕度
家事は自然と私の役目になっていた。


二人が帰宅したか否かは
翌朝、キッチンの洗い場に夕飯の食器があるかないかで確かめていた。


父と母、二人とも仕事人間……



私には幼い頃、家族で出掛けた思い出は
ほとんどなかった。



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