TIME is MONEY
第1章 scene Ⅰ
「…自由にさせてくれよ、もう」
自分でもはっきり分かるくらいの情けない声
もう、強気にいるのも疲れた
“洗脳“ が溶けた今、全身から力が抜けてしまったようだ
「かず……」
雅紀の肩を掴む力が弱まったのが分かったけど
立ち上がる気力もなくて
ここで逃げておけば
多分俺は今までのお気楽な生活に戻れていたんだと思う
だけど、本来の負けず嫌いが災いして
気力がないくせに、近付いた雅紀の顔に唾を吐いて
「ふざけんな…」
その汚れた顔を睨み付けた瞬間
俺は逆に動けなくなってしまったんだ
見たことのない、雅紀の鋭い眼光
この顔を見たら、普段のへらへらした顔なんて絶対に想像がつかない
初めて “怖い“ と思った
“蛇に睨まれた蛙“ ってこんな心境なんだろうか
恐怖に目が離せない、なんて初めての経験で
憎まれ口叩きたくても、そんなの許されるような雰囲気じゃない
「ま…さき…?」
「随分な事、してくれんじゃん」
口角は上がってるけど、全然笑ってない
むしろ怖さが増長されてる
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える