隣は空席のまま…
第2章 冷めたコーヒーを…
うつむく私に…
マスターは…珈琲を差し出した…
「ありがとうございます……いい…薫り」
「よかった…昔はここ…喫茶店もやっていたんですよ…
腕は…落ちてない――…って、証明できて…私もよかった…」
言われて見ると…
バーの造りは…昔喫茶店だった名残が微かに感じられる…
目の前の珈琲は…温かな湯気を揺らし
芳醇な薫りを店に広げていく――…
彼と――…
朝を迎えたかったな――…
彼と…
珈琲…飲みたかったな――…
彼と…もっと――…
もっと――…
「…次ぎは――…
ちゃんとした…恋愛をしたいな……出来るかな?」
湯気が…
霞んで見える…
じわりと瞳に溜まる涙は…
溢れ流れる――…
マスターは、頷くだけで…何も言わなかったが…
私には、十分すぎる相槌だった――…
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