テキストサイズ

夜空は百合の花を狂気的に愛す

第2章 オトギリソウ

夜は空の言いたいことが分かったようで三日月に目を細める。

「そうだねー俺もそう思うなーそういえばチラッと見た時ユリの首に赤い何かついてたよね」

巫山戯るように空に言う夜。

(首に赤…?隠すって…まさか)

そこでやっとハッとしたかのように陽向が立ち上がる。

「まさかお前ら、ユリを…!?」

「…そうかもしれないね」

「うんうん。一緒に暮らしてるんだから、そうなっちゃうのも当たり前だよね」

「…ッお前!!!」

怒り任せに夜の襟首を掴めば、人間とは思えないほど冷たい手が陽向の手首を掴んだ。

そしてどこにそんな力があるのか、有り得ないほどの力で手首を捻られたのだ。

余りの痛さに苦しげな顔をする陽向を夜は真顔で見つめる。

「アンタの大好きなユリは俺達のモノなんだよ。心も身体もね。もうぐちゃぐちゃに犯したし、ユリもそれを受け入れてる。ユリがアンタの方を向くことなんて金輪際絶対にない」

(…また夜、嘘ついてる)

空は関心しながら狂った目をする我が兄を見る。けど自身もこの目をしていることを知っていた。

絶望を表したかのような顔をする陽向に空は視線を合わせて初めてユリと夜以外の前で微笑んだ。

「…だけどね、ユリを愛せる人間も俺達以外いらないの」

その為なら人でも殺すと瞳が語っていた。

青ざめる陽向を2つの黒い目が射抜いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ