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誰も見ないで

第19章 誰も見ないで


ゆっくり触れた唇が離れて

くっついてたはずの手は、切り離すまでもなく離れていく

完全に離れると


あぁ、やっぱり瑞稀君と俺は別の人間なんだなぁ、なんて変な実感をした

チケットを出すところの直前までついて来てくれた瑞稀君に、触れたらまたそこがくっついてしまいそうで

俺は敢えてゲートをくぐってから振り返った


「……」
「……」


無言で手を振ると
瑞稀君は最後に笑って手を振り返してくれた

俺も笑って

前を向いたら、瑞稀君が見えなくなる場所までは振り返らずに一気に歩いた


心臓が痛い

大きな穴が空いて
塞がらない

でも、その空いた部分を瑞稀君が持っててくれるなら、いつかちゃんと埋まるなら

今は
これでいいんだ


チケットに表示された自分の席は偶然にも窓際で

通路側の人に迷惑をかけながらもどうにか座ると、丁度空港が見えた

アナウンスが鳴って

空港とあっさり切り離された飛行機は
滑走路を進むと簡単に地面からその足を離す

遠ざかっていく空港は、涙で滲んではっきりとした形を見ることは出来なかった


まだまだ子供でいたい
けど、そんなの無理だから

俺たちは自分から
こうして道を選んで成長していくんだ


だから、それまで
この思いは


瑞稀君への溢れるほどの愛しい気持ちは


胸に空いた穴を埋める為に
仕舞っておこう

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