初恋
第3章 記憶のかけら
そんな俺の思惑になんて気付けない
素直な彼女は……頭の片隅でちらつく光景を、懐かしむように旅している。
そして──思い出したんだ。
「──…桃色と、黄色」
彼女は目を細めて、同時に鼻をすすった。クンと匂いを嗅ぐように。
「家が並んでる……その向こう側に、桃色がいーっぱいに広がってるの」
「……」
「でも、黄色の日もあったわ」
「そうか」
これも全部、偶然なのか
俺はその場所を知っている。
……よく知っているんだ。
もしかしたら偶然じゃないのかもって、彼女と会ったのも運命なのかもしれないって
そんな馬鹿げた考えが浮かんだのは、この瞬間だったように思う。
「……行こう」
俺は彼女の手を握った。
ココアの缶で温まった手は、柔らかい──女の子の感触だった。
───