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初恋

第4章 赤い屋根のうえ



なんか切ないから、彼女の大切な " あの人 " の顔でも最後に拝んでやるかって……やけくそだった。


俺は彼女の後を追って、赤い屋根の家に近付いた。


しかし……何があったのか。


彼女はまだ、塀の外から家を見上げていた。中に入る気配がない。


……なんだよ屋根違いか?


ここは彼女の家ではなかったんだろうか。


俺は彼女に、違ったのかと尋ねた。


なのに……返事はなかった。




彼女が見ているのは庭に植えられた百日紅( サルスベリ )の木。


では、ないな。


手前の百日紅を通りすぎて、その向こうの……



ニャー



この時、俺はやっと気付いた。


赤い屋根の上には、一匹の黒い仔猫がいたんだ。




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