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初恋

第4章 赤い屋根のうえ



本当に、優しい子よねぇ、と


そう付け加えて、おばさんは家に帰っていった。


赤い屋根の家の、隣の隣の家だった。


俺は言葉を失っていた。


やたらめったら鳴く仔猫の声以外


この閑散とした住宅街は、沈黙に包まれていた。




……君がそこで流してる涙も


たぶん、誰にも届かない悲しみも


周りがこれだけ静かだと、俺には聞こえるし、俺にだけ感じられる。




君はついに耐えきれなくて、やっとたどり着いた自分の家に背を向け、走り去った。


その手から、中身の無くなったココアの缶が滑り落ちる。


カラカラと虚しく転がって、残された俺の足元で止まった。




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