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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第14章 薄汚いこと・・・

言おうと思えば、しようと思えば…
それこそ言い訳なんて
いくらでも出来るかもしれない


例えば…マリアと俺が関係を持ったのは
マリアが別居した後…
マリアの夫婦関係が破綻した後のことだ

とか?

その辺の不倫とは違う、俺らは本気だ

とか?

好きになった人が…
たまたま人妻だっただけだ

とか?

自分らの言い分として
いくらでも、なんとでも言える事は…ある



だけど…


例え誰に、どれだけ話しても


例えありったけに
事情だ理由だ経緯だ、と
俺たちがどれだけ理屈を述べても

〃自論〃にしかならない

…〃屁理屈〃にしか、ならない




元より誰に弁解することでもない

だから俺たちはきっと
そんな事や気持ちは

例え事実であっても絶対に
口にはしないだろう






軽蔑され、疎まれる事はあっても

身内や周りから
歓迎され…

背中を押され、応援されて

世間の人々から祝福を受けることは

あり得ないのだ




仲間や家族にも…誰にも言えない関係



もしも明るみに出れば


マリアは夫以外の男に体を許す
ふしだらな女と皆に蔑まれ


俺は人様のものをかすめ盗る
汚ならしい盗人男と批判されるだろう





…だって、そうだろ?


実際にそうなんだろ?



誰も・・・みんな、さ?

俺たちに


「応援してる!」「頑張って!」


なんて…


まかり間違っても
そんな風に思いもしなければ
声もかけないだろう?






それが〃世間〃ってモンなんだろ?


俺らを批判するって事は
その人はまともな倫理観を持った人って
証拠だろうから。





〃薄汚いことをしている〃


〃お前らは不倫〃



・・・。



あんなイカれた男の・・・


そんな言葉でさえ



頭から離れなかったんだ。






どこの誰ともわからない輩に
揶揄されても

それを否定出来ない事実が
俺たちにはあるんだ。






俺とマリアは・・・


人の道徳やモラルに反する


薄汚い事をする


男と女・・・。





純愛などと語ろうものならば
鼻で笑い飛ばされてしまうであろうこと





そう言われても論破できない
現実の元にいるのだから





どんなに愛し合っていても




俺とマリアは・・・薄汚い




不倫関係なのだから・・・

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