マリア
第13章 夢想曲
潤「風邪、治った?」
「えっ?は、はい。」
潤「そう…よかった。」
唇の端を上げただけの微笑。
それだけで、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
潤「じゃ、僕は午後の診察があるから。」
いつものように、ポケットに片方の手を入れたまま、もう片方の手を上げる。
生「おい、大丈夫なのか?熱っぽい、って言ってたヤツが。」
「え……?」
潤「ああ。大したことな…」
松本先生はポケットから出したハンカチを口元に当て激しく咳き込んだ。
生「悪いことは言わない。医者の不養生、って言われないよう休めよ?」
潤「冗談だろ?午後からも予約が入ってるんだ。」
ポケットから取り出したマスクを付けながら、生田先生を睨んだ。
生「無理するな、って?心療内科医はお前だけじゃないんだから!」
潤「俺に診てもらいたい、って患者もいるんだ!!休んでるわけにはいかない……っ!!」
壁に手をついたか、と思ったら、
松本先生の体が壁づたいに滑り落ちていった。
生「ほら、言わんこっちゃない。」
と、松本先生を抱き抱えるように立ち上がらせた。
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