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マリア

第4章 輪舞曲



当時、お袋の生前から和也の母親と交際していた俺の父親は、



お袋が他界した後も、俺や祖父母に彼女の存在をひた隠しにしていた。



何故なら、俺の家は大きな病院を経営していて、



当時健在だった祖父母は、その跡取りである父親が、病院で一ナースとして働いていた和也の母親との交際を快く思っていなかった。


やがて、和也の母親の妊娠を機に、祖父母に結婚の許しを乞うたが猛反対された上、



祖父母に堕胎を強要された和也の母親は、病院を辞め姿を消した。





故に、二人の所在が分かったのも、俺が二人の存在を知ることになったのも、



和也の母親が亡くなった後のこと。





が、祖父母は、彼女の産んだ子供が男の子と知るや、手のひらを返したように、あの手この手で和也を引き取ろうと躍起になった。



だが、当の和也は首を縦には振らず、俺たち家族には固く心を閉ざしたまま母親の実家に身を寄せていた。




そんな事情を全く知らなかった俺は、



無神経にも頼ってほしいと和也に言ってしまったんだ。





『人殺し。』




そう、和也に罵られるまで事情も知らないまま…。




そんなことがあってからの俺は、



外科医になることを諦め心療内科医となった。



多分、心に傷を負った誰かを救うことで俺は、



和也を、



俺自身を救いたかったんだと思う。





残念ながらまだ、





そのどちらも救ってやることは出来ていないけど…。

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