マリア
第4章 輪舞曲
当時、母さんは仕事ばっかしていた。
和也の将来のために稼がなきゃ、って、
俺をじいさんばあさんに預けてがむしゃらに働いていた。
母さんが死んでしばらくして、ばあさんからその理由を聞いた。
俺の本当の父親のこと。
兄弟のこと。
俺の父親はデカイ病院の跡取りで、
その息子も今や研修医として働いてんだ、って。
だから、将来和也を医者にして父親の家族に認めさせたいんだ、って。
そのためにはお金が必要なんだ、って。
そんな母さんの気持ちなんてこれっぽっちも知らなかった俺は、
どうしてそんなに働くんだろう?
どうしてそんなにお金が必要なんだろう、って思っていた。
俺は金なんかなくったって母さんが側にいてくれればそれでいい、って思っていた。
そんな矢先の出来事だった。
母さんの葬式もすんで、
母さんのいない生活に慣れ始めたころ、
アイツが俺の前に姿を現した。
俺に会いに来た、というその人に、俺が戸惑う素振りを見せると、
ばあさんが俺に耳打ちした。
和也、お前のお兄ちゃんだよ、って。
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